はじめに
エンジンオイルにはユーザーの様々な考え方があり、温度管理や粘土の選び方は、同じ車種、同じ走行ステージ、同じチューニングレベルでも違ったりします。
そこでオイル管理をするとき、自分にはどれが当てはまるのか、油温は何度まで大丈夫なのだろうか、とかいう疑問が出てきます。
オイルの寿命
メーカーの指定で、走行3000km~5000kmか3か月~半年に1回交換するようにと一般的に言われています。
そもそもエンジンオイルの役割は
- 基本的な潤滑性能
- エンジンを冷やす冷却性能
- 圧縮を保持する密閉性能
- 燃焼による汚れを取り込む清浄分散性能
- オイルの酸化を抑制する酸化防止性能
- 金属部分の錆を抑制する防錆性能
- 金属同士がぶつかる衝撃を吸収する緩衝性能
この7つがあり、この能力を発揮するためベースオイルに各種添加剤が使われています。
ベースオイルとは鉱物油や化学合成油と言われるもので、このベースオイルに各種添加剤が加わることで初めてエンジンオイルとなります。
添加剤には、他にも粘度を維持するもの、泡を消すものなどもあります。
そして寿命とは、熱や汚れによってこれらの能力がそのオイルの設計通りに働かなくなった時で、高性能ほど寿命が長いわけではないです。
サーキット走行では
一般道とはまた違う条件にあるため、オイルにかかる負担もそれ相応になります。
エンジンの回転数もアクセルベタ踏みでレブリミットまで一気に回しますし、温度に関しても、一般道を普通に走るときはだいたい90度くらいですが、サーキット走行ともなると、130度、140度、またはそれ以上となることもあります。
一般的にはサーキット走行をする前に交換することを基本とし、1度サーキットでガンガンに使ったオイルや長く使ったオイルは、エンジン保護の観点から次回走行の時には交換してしまう方が良いとされています。
高負荷をかけない街乗り程度では、サーキット走行後でもそこそこ大丈夫だそうです。
油温の上限について
一般道
一般道を普通に走行する分にはそれほど意識する必要はありません。
純正の油温計が普段と違うくらい上昇していたり、警告灯が点いたりしていれば異常ですがww
正確な数値を示す油温計がなければわかりませんが、たまに100度を超すようにすると、オイル内に入り込んだ水分を蒸発させることができます。
サーキット
スポーツ走行をされる方が最も気にする項目の1つではないでしょうか。
走行中は油温とともに水温も常に気にしておかなければなりません。
人によって120度を超えたらクーリングしよう、130度を超えたら、140度を超えたらと人によって差があります。
そもそもオイルが一番快適に機能する温度は、実は80度~130度くらいだそうです。
メーカーがそのように研究開発をしていて、その話が独り歩きし、それぞれの解釈につながったのではないかということらしいです。(TOYOTAのエンジンオイル開発スタッフ談)
オイルを作るうえで高温側の能力を測るときには2つの温度基準があり、1つは100度、もう1つは150度で測るそうです。
もしも、120度や130度でダメになるなら150度では到底測れません。
- 快適に機能する温度が80度から130度
- 製作段階で150度で測定する基準がある
このことからスポーツ走行においても結構高温まで対応することが想像でき、130度140度まで上がったからと言って、すぐさまオイルの機能が失われるということではないようです。
粘土グレードについて
一般道
今やハイブリッドカーなどで0w-20やそれ以下の低粘度のオイルが使われることも珍しくなくなりました。
それは現在の機械の精度やオイルの性能が上がったことにあります。
ですので、燃費が良いからと昔の10w-30を入れていた車に0w-20のオイルを入れると圧縮漏れによってパワーが出なくなったりエンジンを痛めてしまったりします。
その逆は、もしかしたら狭いすき間に硬いオイルが入り込めなくなるということがあるかもしれません。
入れるものは純正の標準同等でよさそうです。
サーキット
スポーツ走行においては標準同等とはいかず、それ以上に高温高負荷に耐え油膜を維持できるものでなければいけません。
しかし、ただ粘土を高くすれば良いということではないようです。
もちろん油膜の維持のために粘土を上げるというのは選択のひとつですが、高温高負荷には高粘度という考えは今や必ずしも当てはまるとは限りません。
- オイルは、オイルポンプで吸い上げてエンジンに行きわたらせます。
- 吸われたオイルは徐々に流れ落ちてきてオイルパンに戻ります。
この循環になりますが、オイルパンから吸い上げているので、吸うとオイルパンにあるオイルは当然減ります。
柔らかいオイルはサラサラと流れ落ちるスピードも速く、硬いオイルはドロドロと流れ落ちるスピードは遅いです。
戻りが遅くてもポンプはどんどんオイルを吸い上げていきます。
さらにサーキット走行では強いGによってオイルの偏りが起こり、ただでさえ減ったオイルはそれによって吸い口から離れ、最悪吸えないことによる油圧の低下ということが起こりえます。
その対策として指定量より少し多めに入れるということも車種によってはあるそうですが、もちろん入れすぎもよくありません。
オイルパンを外すと吸い口が見えます。
柔らかすぎたら油膜が足りない、硬すぎたら戻りが遅い、やはり車種に合った性能、粘度選びが重要です。
温度変化による粘度の変化
温度による粘度の変化は粘度指数というもので表されます。
粘度指数は、Viscosity Index=VIと表記されることもあります。
粘度指数は、40度の時の動粘土と100度の時の動粘土から求められ、温度による粘度変化が小さいほど、粘度指数は高くなります。
動粘度とは細い管のなかを自重で通過する速度(時間)が速いほど数値は小さく、遅いほど大きくなります 。
個人的によく使うモービル1の5w-40では、40度→80、100度→13.7、VI値176となっています。
ちなみにモービル1のラインナップでは
40℃ | 100℃ | VI値 | |
0w-20 | 44 | 8.7 | 173 |
0w-30 | 62.9 | 10.9 | 166 |
5w-30 | 61.7 | 11 | 172 |
10w-30 | 63.2 | 10.1 | 146 |
0w-40 | 70.8 | 12.9 | 186 |
5w-40 | 80 | 13.7 | 176 |
5w-50 | 104.3 | 17.1 | 179 |
15w-50 | 125 | 18 | 160 |
このようになっています。
一覧で見ると、同じ0wでも高温側のグレードによっては低温側の動粘度も上がる傾向にあります。
0w-30と5w-30で比べると、40度の動粘度は0w-30の方がなぜか高く、100度の動粘度は低いので、5w-30の方が低温時には軽やかでありながら高温時でも高い粘度を維持していることがわかります。
0w-30はハイブリッド推奨のようなので、もしかしたらエンジンのクリアランスの関係で、あまり動粘土を大きく変化させない設計になっているのかもわかりませんね。
他には、同じメーカーの粘土グレードでも街乗り重視、サーキット重視、価格重視などのモデルの違いで動粘度や粘度指数が違ったりしますし、違うメーカーでも例えばサーキット重視で同じ粘土グレードだとしても、動粘度や粘度指数が違ったりします。
ちなみに5w-40を比べてみると
40℃ | 100℃ | VI値 | |
モティーズ M111 | 88.1 | 14.4 | 169 |
カストロール EDGE | 84 | 14 | 173 |
モチュール 300V Power | 81.8 | 13.6 | 174 |
モービル1 | 80 | 13.7 | 176 |
ガルフ アローGT40 | 72.31 | 14.36 | 208 |
こう見るとガルフがすごいですね!
モデルは、自分ならこれを入れるかなぁという独断と偏見なので、もしかしたら比べるにはフェアなものではないかもしれませんが悪しからず(笑)
まとめ
エンジンオイルの交換時期
- メーカー指定
- サーキット走行をする前
- オイルの寿命とは添加剤の劣化によるもの
油温
- 街乗りでもオイルに入った水分を飛ばすため、たまには100度以上を心掛けるとよい
- 130度を超えても意外といける
粘土グレード
- 基本的にはメーカー指定
- 高負荷をかける場合でもただ単に高いものを選べばいというわけではない
- 燃費にいいからとただ単に低いものを選べばいいというわけではない
- 同じ粘土グレードでもモデルやメーカーの違いで動粘度は異なる
個人的に好きなオイル
記事中何度も出てきたモービル1の5w-40です。
なぜと言われると、はじめはオートバックスで売っていた10W-30で、4L、1000円程度という一番安い鉱物油を入れていましたww
当時は街乗りだけでしたので。
そこから走りの方に興味を持ちだしてグレードアップしようとしたときに初めて入れたオイルがモービル1だから、といううす~い理由です(笑)
しかし、VTECのコンプリートエンジンを作っているK-TECの河島さんにメールでエンジンについて質問したとき、「有名メーカーであれば間違いはないが、モービル1の5w-40などは侮れない」と言っていました。
自分が作ったわけでもないのに、使用しているものを褒められるとなんかうれしいですね(笑)
ちなみに使用しているエンジンはホンダのB18CでNAです。
おわりに
調べながら油温が130度超えても大丈夫だろうということを、感覚的にではなく理屈として理解できたのは面白かったし、比較して粘土グレードが同じでも動粘度が違ったり、低い粘土グレードより高い粘土グレードの方が動粘度が低かったりするというのも面白かったです。
粘土グレードではなく動粘度でオイル選びをするのも面白いかもわかりませんね。
とすると、粘土グレードが違っても動粘度、粘度指数が限りなく近いものならどっちを選んでもエンジンのパフォーマンスは変わらないんですかね?